会社員の手取り計算方法を詳しく解説
会社員の給与から手取り額を計算する方法を、具体例を交えて詳しく説明します。
会社員の手取り計算方法を詳しく解説!給与明細の見方もわかる
会社員として働く皆さんにとって、毎月の給与は生活の基盤です。しかし、給与明細を見て「額面の給与額と、実際に振り込まれる金額(手取り)が違うのはなぜ?」と疑問に思ったことはありませんか?
この差額は、給与から税金や社会保険料が差し引かれているためです。本記事では、会社員の手取り給与がどのように計算されるのか、給与明細に記載されている項目を一つひとつ解説しながら、その仕組みを分かりやすく説明します。手取り額を正確に把握し、賢く家計を管理するための参考にしてください。
1. 「額面給与」と「手取り給与」の違い
まず、給与に関する基本的な用語を確認しましょう。
- 額面給与(総支給額): 会社が定める基本給に、各種手当(残業手当、通勤手当、役職手当など)を加算した、税金や社会保険料が引かれる前の総額です。
- 手取り給与: 額面給与から、税金(所得税、住民税)や社会保険料(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険)が差し引かれた、実際に銀行口座に振り込まれる金額のことです。
一般的に、手取り給与は額面給与の約75%〜85%程度になると言われています。
2. 手取り計算の基本的な流れ
手取り給与は、以下の計算式で求められます。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
3. 給与から差し引かれる項目(控除)
給与から差し引かれる項目は大きく分けて「社会保険料」と「税金」の2種類です。これらを「控除」と呼びます。
3-1. 社会保険料
社会保険料は、将来のリスク(病気、老齢、失業など)に備えるための保険料です。会社と従業員が折半して負担するものがほとんどです。
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健康保険料:
- 病気やけがをした際の医療費負担を軽減するための保険です。
- 保険料額は、**標準報酬月額(給与を一定の幅で区切った額)**に、居住地の都道府県や加入している健康保険組合が定める保険料率を乗じて算出されます。
- 例:協会けんぽ(東京都)の場合、令和6年3月分からの健康保険料率は9.98%(40歳未満の場合)。これを会社と従業員で折半するため、従業員負担は約4.99%です。
- 40歳以上65歳未満の場合は、介護保険料も合わせて徴収されます。
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厚生年金保険料:
- 老後の生活保障のための公的年金制度です。
- 保険料額は、標準報酬月額に厚生年金保険料率(現在は18.3%)を乗じて算出され、会社と従業員で折半するため、従業員負担は**9.15%**です。
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雇用保険料:
- 失業した場合の給付や、育児休業・介護休業給付など、雇用に関する保険です。
- 保険料額は、**額面給与(賞与も含む総賃金)**に雇用保険料率を乗じて算出されます。
- 雇用保険料率は業種によって異なり、例として一般の事業では従業員負担が0.6%(令和6年度)。
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介護保険料(40歳以上65歳未満の人のみ):
- 介護が必要になった際にサービスを利用するための保険です。
- 健康保険と合わせて徴収され、保険料率は健康保険組合や協会けんぽによって異なります(例:協会けんぽの場合、令和6年3月分からの介護保険料率は1.60%)。健康保険料と同様に会社と従業員で折半されます。
これらの社会保険料は、毎月の給与から控除されます。金額は給与額や年齢、居住地によって変動します。
3-2. 税金
給与から差し引かれる税金は主に「所得税」と「住民税」です。
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所得税:
- 個人の所得に対して課される国税です。
- 所得税は、給与から社会保険料や各種所得控除(基礎控除、扶養控除、生命保険料控除など)を差し引いた「課税所得」に、所得税率を乗じて計算されます。
- 会社員の場合、毎月の給与から概算で徴収され(源泉徴収)、年末に「年末調整」で過不足が調整されます。
- 所得税率は、課税所得が多くなるほど税率が高くなる「累進課税制度」が採用されています。
課税所得の金額 所得税率 控除額 195万円以下 5% 0円 195万円超 330万円以下 10% 9万7,500円 330万円超 695万円以下 20% 42万7,500円 695万円超 900万円以下 23% 63万6,000円 900万円超 1,800万円以下 33% 153万6,000円 1,800万円超 4,000万円以下 40% 279万6,000円 4,000万円超 45% 479万6,000円 (※復興特別所得税として、上記所得税額の2.1%が加算されます。)
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住民税:
- 個人の所得に対して課される地方税(都道府県民税と市町村民税の合計)です。
- 住民税は、前年の所得に基づいて計算され、今年の6月から翌年5月までの12回に分けて毎月の給与から天引きされます(特別徴収)。
- 税率は所得に対して一律10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)の「所得割」と、所得に関わらず定額で課される「均等割」(自治体によって異なるが、一般的に5,000円程度)で構成されます。
4. 給与明細の見方と計算例
実際の給与明細に沿って、手取り給与の計算を見てみましょう。
【給与明細の一般的な項目】
- 勤怠: 出勤日数、労働時間、有給取得日数など。
- 支給:
- 基本給
- 残業手当、通勤手当、役職手当、住宅手当など
- 交通費(非課税限度額内は所得税の課税対象外)
- 総支給額(額面給与)
- 控除:
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料(40歳以上)
- 所得税
- 住民税
- その他(財形貯蓄、社内預金、組合費など)
- 控除合計額
- 差引支給額: 手取り給与額
【手取り計算例】
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額面給与(総支給額): 300,000円
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社会保険料合計:
- 健康保険料:14,970円 (東京都協会けんぽ、標準報酬月額30万円の場合)
- 厚生年金保険料:27,450円 (標準報酬月額30万円の場合)
- 雇用保険料:1,800円 (300,000円 × 0.006)
- 社会保険料合計:44,220円
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税金:
- 所得税: (額面給与300,000円 - 社会保険料44,220円)に所得税源泉徴収税額表を適用して算出。扶養親族なしの場合、例えば3,850円。
- 住民税: 前年の所得に基づいて計算。例えば12,000円。
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控除合計額: 44,220円(社会保険料) + 3,850円(所得税) + 12,000円(住民税) = 60,070円
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手取り給与: 300,000円(額面) - 60,070円(控除合計) = 239,930円
このように、額面30万円の給与でも、手取りは約24万円程度になることが分かります。
5. 手取り額を増やすためのポイント
手取り額を増やすには、給与を増やす以外にも、税金や社会保険料の負担を軽減する方法があります。
- 各種所得控除の活用:
- 生命保険料控除、医療費控除、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金控除、ふるさと納税(寄付金控除)などを活用することで、課税所得を減らし、所得税・住民税を軽減できます。
- 節税対策の検討:
- 住宅ローン控除など、適用できる税額控除がないか確認する。
- 副業(個人の裁量による):
- 副業で収入を増やすことも手取り額を増やす一つの方法ですが、税金や確定申告について理解が必要です。
まとめ
会社員の手取り給与は、額面給与から社会保険料と税金が差し引かれた金額です。給与明細の項目を理解し、何がいくら引かれているのかを把握することは、家計管理の第一歩です。
自身の給与明細を確認し、控除額を把握することで、将来のライフプランや家計の見直しに役立てましょう。不明な点があれば、会社の給与担当部署や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。