法人税の基本的な計算方法
法人税の計算方法について、基本的な仕組みから具体的な計算例まで詳しく解説します。
法人税の基本的な計算方法を分かりやすく解説!
会社を経営する上で避けて通れないのが「法人税」の計算と納税です。複雑な印象を持つかもしれませんが、基本的な計算の流れとポイントを理解すれば、決して難しいものではありません。
本記事では、法人税の基本的な計算方法について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
1. 法人税の基本的な計算式
法人税の基本的な計算式は以下の通りです。
この式からもわかるように、法人税額を算出するためには、まず「課税所得」を正確に計算することが重要です。
2. 課税所得の算出方法
「課税所得」とは、法人税を計算する上での課税対象となる所得のことで、会計上の利益とは異なる場合があります。
- 益金(えききん): 法人税法上の収益のことで、売上、受取利息、有価証券売却益などが該当します。会計上の収益とほぼ同じですが、受取配当金の益金不算入など、一部異なる項目があります。
- 損金(そんきん): 法人税法上の費用のことで、仕入原価、販売費、一般管理費、減価償却費などが該当します。会計上の費用とほぼ同じですが、交際費の一部損金不算入など、一部異なる項目があります。
つまり、会計上の「税引前当期純利益」をスタート地点として、税務上のルールに基づいて調整(税務調整)を行い、「課税所得」を算出します。
会計上の利益から課税所得への調整(税務調整の例)
会計上の区分 | 法人税法上の区分 | 税務調整の例 |
---|---|---|
収益(売上など) | 益金 | 受取配当金の益金不算入 など |
費用(給与など) | 損金 | 交際費の一部損金不算入、寄付金の一部損金不算入 など |
利益 | 課税所得 |
具体的な税務調整は多岐にわたりますが、代表的なものには以下のようなものがあります。
- 損金不算入: 会計上は費用だが、税務上は損金として認められないもの(例:一部の交際費、役員報酬の一部、役員賞与など)。
- 益金不算入: 会計上は収益だが、税務上は益金として算入しないもの(例:受取配当金の一部など)。
- 損金算入: 会計上は費用ではないが、税務上は損金として認められるもの(例:圧縮記帳など)。
- 益金算入: 会計上は収益ではないが、税務上は益金として算入するもの。
これらの調整を行い、最終的な課税所得を確定します。
3. 法人税率について
日本の法人税率は、法人の規模や所得額によって異なります。
普通法人(株式会社など)の基本的な法人税率
課税所得の金額 | 法人税率 |
---|---|
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% |
※中小法人(期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人など)の場合。大企業(資本金1億円超など)の場合は、年800万円以下の部分も23.20%となることがあります。
4. 税額控除額について
法人税額は、課税所得に法人税率を乗じた額から、各種の「税額控除」を差し引いて計算されます。税額控除とは、税金そのものから直接差し引かれるものです。
代表的な税額控除には以下のようなものがあります。
- 研究開発税制(研究開発税額控除): 試験研究費の一定割合を法人税額から控除できる制度。
- 賃上げ促進税制(所得拡大促進税制): 従業員の給与等を増加させた場合に、その増加額の一定割合を法人税額から控除できる制度。
- 雇用促進税制: 新たに従業員を雇用した場合に、一定額を法人税額から控除できる制度。
- 中小企業投資促進税制: 中小企業等が特定の設備投資を行った場合に、特別償却または税額控除を選択できる制度。
これらの税額控除を適用することで、実際に納める法人税額を減らすことができます。
5. 法人住民税・法人事業税について
法人税の計算方法を理解する上で、関連する以下の税金も重要です。これらは「法人税」とは別に計算され、納付が必要です。
- 法人住民税: 法人税額に応じて計算される「法人税割」と、資本金等の額や従業員数に応じて計算される「均等割」があります。地方自治体(都道府県、市町村)に納めます。
- 法人事業税: 所得に応じて計算され、事業を行っている法人に対して課せられる税金です。都道府県に納めます。
これらを合算したものが、法人として最終的に納める税金総額となります。
まとめ
法人税の計算は、会計上の利益を基に税務調整を行って課税所得を算出し、それに法人税率を乗じ、さらに税額控除を差し引くという流れを理解することが重要です。
正確な税務処理と節税対策を行うためには、日々の帳簿付けを適切に行い、税法に関する知識を深めるか、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。計画的な納税と節税で、健全な会社経営を目指しましょう。