法人税の計算方法をわかりやすく解説|税率・課税所得の出し方と計算例
法人税はいくらかかるのか。「課税所得 × 法人税率 − 税額控除」という基本の流れから、会計上の利益と課税所得の違い(税務調整)、中小法人の軽減税率15%・23.2%の区分、法人住民税・法人事業税との関係までを、国税庁の公表値に沿ってわかりやすく解説します。
法人税の計算方法をわかりやすく解説|税率・課税所得の出し方と計算例
法人税は「課税所得 × 法人税率 − 税額控除額」で計算します。 中小法人であれば、所得のうち年800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%が基本です。
複雑に見えますが、難しいのは税率ではなく「課税所得をどう出すか」です。会計上の利益と税務上の所得は一致しないため、決算書の利益をそのまま税率に掛けても正しい法人税額にはなりません。
この記事では、法人税の計算の流れを、課税所得の算出(税務調整)から税率、関連する法人住民税・法人事業税までを通して解説します。
1. 法人税の基本的な計算式
法人税の基本的な計算式は以下の通りです。
この式からもわかるように、法人税額を算出するためには、まず「課税所得」を正確に計算することが重要です。
2. 課税所得の算出方法
「課税所得」とは、法人税を計算する上での課税対象となる所得のことで、会計上の利益とは異なる場合があります。
- 益金(えききん): 法人税法上の収益のことで、売上、受取利息、有価証券売却益などが該当します。会計上の収益とほぼ同じですが、受取配当金の益金不算入など、一部異なる項目があります。
- 損金(そんきん): 法人税法上の費用のことで、仕入原価、販売費、一般管理費、減価償却費などが該当します。会計上の費用とほぼ同じですが、交際費の一部損金不算入など、一部異なる項目があります。
つまり、会計上の「税引前当期純利益」をスタート地点として、税務上のルールに基づいて調整(税務調整)を行い、「課税所得」を算出します。
会計上の利益から課税所得への調整(税務調整の例)
| 会計上の区分 | 法人税法上の区分 | 税務調整の例 |
|---|---|---|
| 収益(売上など) | 益金 | 受取配当金の益金不算入 など |
| 費用(給与など) | 損金 | 交際費の一部損金不算入、寄付金の一部損金不算入 など |
| 利益 | 課税所得 |
具体的な税務調整は多岐にわたりますが、代表的なものには以下のようなものがあります。
- 損金不算入: 会計上は費用だが、税務上は損金として認められないもの(例:一部の交際費、役員報酬の一部、役員賞与など)。
- 益金不算入: 会計上は収益だが、税務上は益金として算入しないもの(例:受取配当金の一部など)。
- 損金算入: 会計上は費用ではないが、税務上は損金として認められるもの(例:圧縮記帳など)。
- 益金算入: 会計上は収益ではないが、税務上は益金として算入するもの。
これらの調整を行い、最終的な課税所得を確定します。
ひとり法人・マイクロ法人の場合、この課税所得を最も大きく動かすのが役員報酬です。役員報酬は損金になるため、報酬を上げれば法人の課税所得は減りますが、そのぶん個人の所得税・住民税・社会保険料が増えます。この綱引きのバランスは役員報酬シミュレーターで試算できます。
3. 法人税率について
日本の法人税率は、法人の規模や所得額によって異なります。
普通法人(株式会社など)の法人税率
| 課税所得の金額 | 法人税率 |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15% |
| 年800万円超の部分 | 23.20% |
※ 中小法人(期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人など)の場合。資本金1億円超などの法人は、年800万円以下の部分も**23.20%**となります。
年800万円超の部分の23.2%は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されている税率です(それ以前は23.4%)。令和7年4月1日以後に開始する事業年度でも23.2%で据え置かれています。
令和7年4月1日以後に開始する事業年度からの注意点
- 所得が年10億円を超える事業年度は、年800万円以下の部分に適用される税率が**15%から17%**になります。
- 適用除外事業者(過去3年の平均所得が年15億円超の法人など)は、年800万円以下の部分が**19%**になります。
いずれもひとり法人・中小企業の多くには関係しませんが、軽減税率15%が「資本金1億円以下ならいつでも使える」わけではない点は押さえておきましょう。
4. 税額控除額について
法人税額は、課税所得に法人税率を乗じた額から、各種の「税額控除」を差し引いて計算されます。税額控除とは、税金そのものから直接差し引かれるものです。
代表的な税額控除には以下のようなものがあります。
- 研究開発税制(研究開発税額控除): 試験研究費の一定割合を法人税額から控除できる制度。
- 賃上げ促進税制: 従業員の給与等を増加させた場合に、その増加額の一定割合を法人税額から控除できる制度。
- 中小企業投資促進税制: 中小企業等が特定の設備投資を行った場合に、特別償却または税額控除を選択できる制度。
これらの税額控除を適用することで、実際に納める法人税額を減らすことができます。適用要件は制度ごとに細かく定められているため、利用を検討する際は国税庁の各タックスアンサーや顧問税理士に確認してください。
5. 計算例:課税所得1,000万円の中小法人
資本金1,000万円・課税所得1,000万円の中小法人(税額控除なし)の場合、法人税額は次のようになります。
| 区分 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 8,000,000 × 15% | 1,200,000円 |
| 年800万円超の部分 | 2,000,000 × 23.2% | 464,000円 |
| 法人税額 合計 | 1,664,000円 |
なお、実際に納める税金はこれだけではありません。次に説明する地方法人税・法人住民税・法人事業税が上乗せされます。
6. 法人住民税・法人事業税について
法人税の計算方法を理解する上で、関連する以下の税金も重要です。これらは「法人税」とは別に計算され、納付が必要です。
- 地方法人税: 法人税額に対して課される国税です。
- 法人住民税: 法人税額に応じて計算される「法人税割」と、資本金等の額や従業員数に応じて計算される「均等割」があります。均等割は赤字でも発生する点に注意が必要です。地方自治体(都道府県、市町村)に納めます。
- 法人事業税: 所得に応じて計算され、事業を行っている法人に対して課せられる税金です。都道府県に納めます。あわせて特別法人事業税も課されます。
これらを合算したものが、法人として最終的に納める税金総額となります。法人税率だけを見て「利益の23%が税金」と考えると、実際の負担を過小に見積もることになります。
まとめ
法人税の計算は、会計上の利益を基に税務調整を行って課税所得を算出し、それに法人税率を乗じ、さらに税額控除を差し引くという流れを理解することが重要です。
- 税率は中小法人で年800万円以下が15%、超える部分が23.2%。
- 令和7年4月1日以後開始事業年度では、所得10億円超なら15%→17%、適用除外事業者は19%。
- 法人税のほかに地方法人税・法人住民税・法人事業税がかかり、均等割は赤字でも発生する。
ひとり法人・マイクロ法人であれば、法人税と個人の税・社会保険料を通した最適な役員報酬額を役員報酬シミュレーターで試算できます。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率
- 国税庁 タックスアンサー No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
- 国税庁 タックスアンサー No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。適用される税率・制度は事業年度や法人の区分により異なります。正確な税務処理については、顧問税理士や所轄の税務署にご確認ください。