ガソリン暫定税率とは?仕組みと廃止・復活の歴史を解説
ガソリン価格が変動するたびに話題になる『暫定税率』。これは、本来の税率に上乗せされていた特別な税率のことです。この記事では、ガソリン暫定税率の仕組み、なぜ導入されたのかという歴史的背景、そしてその廃止や復活がどのように私たちの生活に影響を与えてきたのかを分かりやすく解説します。
ガソリン暫定税率とは?仕組みと廃止・復活の歴史を解説
ガソリン価格のニュースが流れるたびに、「暫定税率」という言葉を耳にすることがあります。これは、ガソリンにかかる税金に上乗せされていた、時限的な特別な税率のことです。この制度は、日本の財政やインフラ整備に深く関わってきました。
この記事では、ガソリン暫定税率の仕組み、なぜ導入されたのかという歴史的背景、そしてその廃止や復活がどのように私たちの生活に影響を与えてきたのかを分かりやすく解説します。
1. ガソリン暫定税率の仕組み
ガソリンにかかる主な税金は「揮発油税(きはつゆぜい)」と「地方揮発油税」です。このうち、暫定税率が上乗せされていたのは揮発油税の部分です。
(1) 本則税率と暫定税率
暫定税率が適用されていた時期のガソリン税の内訳は以下の通りです。
| 税目 | 本則税率(本来の税率) | 暫定税率(上乗せ分) | 合計(課税額) |
|---|---|---|---|
| 揮発油税 | 1リットルあたり 24.3円 | 1リットルあたり 25.1円 | 49.4円 |
| 地方揮発油税 | 1リットルあたり 4.4円 | 地方揮発油税に暫定税率の上乗せはなし | 53.8円 |
つまり、ガソリンには本来の税率(本則税率)に、1リットルあたり約25.1円が暫定的に上乗せされていました。この上乗せ分が「暫定税率」であり、ガソリン価格のおよそ半分は税金で占められています。
(2) 目的税としての役割
このガソリン税は、かつては使い道が「道路整備」に限定された道路特定財源として運用されていました。暫定税率も、この道路整備のための財源を確保するために設けられていました。
2. 暫定税率の導入と廃止・復活の歴史
暫定税率が導入されたのは、日本のインフラ整備が急務だった時代にさかのぼります。
- 導入の背景(1970年代): 高度経済成長期を経て、日本の高速道路や一般道路などのインフラ整備が追いついていませんでした。そこで、道路整備のための安定的な財源を確保するために、一時的な措置として暫定税率が導入されました。
- 民主党政権下の「一時的な廃止」(2008年): 2008年、ガソリン価格の高騰と「道路特定財源の一般財源化」を巡る議論の中で、暫定税率の期限切れに伴い、一時的に暫定税率部分が廃止されました。この結果、ガソリン価格は一時的に1リットルあたり25.1円下落しましたが、すぐに国会で復活され、その後の混乱を招きました。
- 一般財源化(2009年): 最終的に、道路特定財源制度は廃止され、ガソリン税などの使途が道路整備に限定されない一般財源へと組み込まれました。しかし、暫定税率による高い税率は、財源確保のために実質的に維持されることになりました。
3. 現代における「トリガー条項」と今後の議論
暫定税率は、現在も税法上に存在し続けていますが、ガソリン価格の急騰時に再び話題となるのが「トリガー条項」です。
- トリガー条項とは: ガソリン価格が一定水準を超えた場合、時限措置として暫定税率分の課税(25.1円)を停止し、価格を引き下げるための制度です。
- 現状: このトリガー条項は、東日本大震災の復興財源確保を理由に、現在まで凍結状態にあります。ガソリン価格が高騰しても、自動的に発動される仕組みにはなっていません。
- 今後の議論: 暫定税率は、名目上は「暫定」を冠していますが、実質的には恒久的な税率として定着しています。今後は、税制の簡素化や公平性の観点から、この「暫定」という名称と高い税率のあり方が、引き続き議論の対象となるでしょう。
まとめ
ガソリン暫定税率は、道路整備という目的のために導入された特別な上乗せ税率でしたが、現在は一般財源となり、実質的に恒久化しています。
この税率は、ガソリン価格の約半分を占める構造を作り上げており、自動車を運転するすべての人に大きな影響を与えています。暫定税率の仕組みと歴史を理解することは、今後の税制やエネルギー政策の議論を追う上で不可欠な知識と言えるでしょう。