扶養控除の条件と計算方法
扶養控除を受けるための条件と、控除額の計算方法について詳しく説明します。
扶養控除の条件と計算方法を徹底解説!賢く節税しよう
年末調整や確定申告の際に耳にする「扶養控除」。これは、納税者が特定の親族を扶養している場合に受けられる所得控除であり、所得税や住民税の負担を軽減する上で非常に重要な制度です。
しかし、「誰が扶養控除の対象になるの?」「控除額はいくら?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。本記事では、扶養控除の対象となる条件、控除額、そして計算方法について、初心者の方にも分かりやすく解説します。この制度を理解し、賢く節税に役立てましょう。
1. 扶養控除とは?
扶養控除とは、納税者に扶養親族がいる場合に、納税者の課税所得から一定額を控除する制度です。所得控除の一種であり、所得金額から控除されることで、課税所得が減り、結果として所得税や住民税の税額が軽減されます。
2. 扶養控除の対象となる扶養親族の条件
扶養控除の対象となる「扶養親族」には、以下のすべての条件を満たす必要があります。
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配偶者以外の親族であること:
- 6親等内の血族、または3親等内の姻族であること。
- 都道府県知事から養育を委託された里子、または市町村長から養護を委託された老人なども含まれます。
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納税者と生計を一つにしていること:
- 同居している必要はありません。例えば、単身赴任中の夫が実家で暮らす親族に生活費を送金している場合なども該当します。
- ただし、2024年度税制改正により、国外居住親族については、原則として30歳以上70歳未満の者は、以下のいずれかに該当する者に限定されます。
- 留学により国外居住者となった者
- 障害者
- 扶養控除を適用する居住者から生活費または教育費に充てるための送金等によって、年間38万円以上の送金を受けている者
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年間の合計所得金額が48万円以下であること:
- 給与所得者の場合は、給与収入が103万円以下(給与所得控除55万円+基礎控除48万円=103万円)であれば、所得金額が48万円以下となります。
- 事業所得者の場合は、売上から経費を差し引いた所得が48万円以下です。
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青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと:
- 事業主の事業に専従している場合は、扶養控除の対象外となります。
3. 扶養控除の控除額
扶養親族の年齢や状況によって、控除額は以下のように異なります。
扶養親族の区分 | 控除額(所得税) | 控除額(住民税) | 備考 |
---|---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | 33万円 | 16歳以上19歳未満、または23歳以上70歳未満 |
特定扶養親族 | 63万円 | 45万円 | 19歳以上23歳未満の者(大学等への進学者が多い) |
老人扶養親族 | |||
- 同居老親等 | 58万円 | 45万円 | 70歳以上の直系尊属で納税者または配偶者と同居 |
- 同居老親等以外 | 48万円 | 38万円 | 70歳以上の直系尊属またはその他の親族 |
同居特別障害者 | 上記の控除額に+40万円 | 上記の控除額に+30万円 | 同居の特別障害者である扶養親族がいる場合 |
その他特別障害者 | 上記の控除額に+27万円 | 上記の控除額に+26万円 | 上記以外で特別障害者である扶養親族がいる場合 |
- 15歳以下の扶養親族について: 以前は「年少扶養親族」として扶養控除の対象でしたが、現在は子ども手当(児童手当)が支給される代わりに、所得税・住民税の扶養控除の対象外となっています。ただし、住民税の非課税限度額の計算には含まれます。
4. 扶養控除の計算方法
扶養控除は、あなたの課税所得から控除額を差し引くことで、所得税や住民税の税額を軽減します。
例:会社員Aさんの場合
- 年収:500万円
- 扶養親族:19歳の子(アルバイト収入なし、所得金額48万円以下)=特定扶養親族(控除額63万円)
- 社会保険料控除:70万円
- 生命保険料控除:4万円
- 基礎控除:48万円
計算手順
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給与所得金額の算出:
- 年収500万円の場合、給与所得控除額は「年収×20%+44万円=144万円」(簡略計算の場合)。
- 給与所得金額 = 500万円 - 144万円 = 356万円
-
所得控除合計額の算出:
- 社会保険料控除:70万円
- 生命保険料控除:4万円
- 基礎控除:48万円
- 扶養控除(特定扶養親族):63万円
- 所得控除合計額 = 70万 + 4万 + 48万 + 63万 = 185万円
-
課税所得金額の算出:
- 課税所得金額 = 給与所得金額 - 所得控除合計額
- 課税所得金額 = 356万円 - 185万円 = 171万円
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所得税額の算出:
- 所得税額 = 課税所得金額 × 所得税率 - 控除額
- 課税所得171万円の場合、所得税率は5%(所得税速算表に基づく)
- 所得税額 = 171万円 × 5% = 8万5,500円
扶養控除がなければ、課税所得は「171万円 + 63万円 = 234万円」となり、所得税額は「234万円 × 10% - 9万7,500円 = 13万6,500円」と高くなります。扶養控除により、所得税が大きく軽減されることがわかります。
5. 扶養控除を受けるための手続き
会社員(給与所得者)の場合、年末調整の際に「扶養控除等(異動)申告書」に必要事項を記入し、会社に提出することで扶養控除が適用されます。
個人事業主など確定申告が必要な場合は、確定申告書に扶養親族の情報を記載することで扶養控除を適用できます。
まとめ
扶養控除は、家族を扶養している納税者にとって、税負担を軽減するための重要な制度です。扶養親族の条件や年齢に応じた控除額を正しく理解し、年末調整や確定申告で漏れなく申告することが、賢い節税に繋がります。
ご自身の状況や扶養しているご家族の状況を確認し、最大限に扶養控除を活用しましょう。不明な点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。