一人法人のIT開発会社は何を経費にできる?「守りの節税」と「攻めの投資」
フリーランスから法人化(一人社長)したITエンジニアにとって、最大のメリットの一つが「経費の範囲が広がること」です。しかし、どこまでがOKで、どこからがNGなのか?PCやサーバー代はもちろん、家賃、社宅、そしてAmazonギフト券まで?IT開発会社ならではの経費精算のポイントと、税務調査で否認されないための「説明力」について解説します。
1. ITエンジニアの「三種の神器」は迷わず経費へ
開発業務に直結するものは、堂々と経費にできます。ここは「守りの経費」として漏れなく計上しましょう。
① ハードウェア・ガジェット類
-
PC・モニター: MacBook Proなどの高スペックPC、デュアルモニター、検証用スマホ、タブレットなど。
-
Point: 青色申告の特典(少額減価償却資産の特例)を使えば、30万円未満のものなら一括でその年の経費に落とせます。「期末に利益が出すぎそうだからMacを買い換える」は常套手段です。
-
周辺機器: 高級キーボード(HHKBなど)、マウス、高機能チェア(アーロンチェアなど)。これらは長時間作業するエンジニアにとって「生産設備」です。
② ソフトウェア・SaaS・クラウド費用
- サブスクリプション: AWS/GCP/Azureなどのサーバー代、GitHub、JetBrains、OpenAI API(ChatGPT)、Adobe CC、Slack、Zoomなど。
- Point: ドル払いのものが多いので、為替レートの変動に注意しつつ、クレジットカードの明細をしっかり管理しましょう。
③ 通信費・ネット環境
- インターネット回線: 自宅兼事務所の場合、業務で使用する割合(按分)を経費にできます。エンジニアの場合、高速回線は必須のため、使用時間の割合などで高めに設定する論拠も立ちやすいです。
2. 一人法人だからこそ使える「強力な節税カード」
個人事業主では使いにくかったり、効果が薄かったりするものが、法人では強力な武器になります。
④ 役員社宅(最強の節税)
持ち家ではなく賃貸の場合、会社名義で契約し、「社宅」として社長(あなた)に貸し出す形をとります。
- メリット: 家賃の50%〜80%程度(物件や計算方法による)を会社の経費にできます。
- 注意点: 個人契約から法人契約への切り替え手数料がかかる場合がありますが、長期的に見れば圧倒的に得です。
⑤ 出張手当(日当)
就業規則(旅費規程)を作成すれば、出張のたびに非課税の「日当」を支給できます。
- メリット: 会社は経費になり、個人は所得税がかからない「手取り」として受け取れます。クライアント先への常駐や、地方でのワーケーションが多い場合に有効です。
⑥ 経営セーフティ共済(倒産防止共済)
月額最大20万円(年240万円)までを全額経費にしながら積み立てられます。
- 用途: 解約すれば戻ってくるため、将来の「退職金」の原資や、赤字が出た年の補填に使えます。※解約のタイミングには課税の注意が必要です。
3. IT業界特有の「グレーゾーン」と「攻めの投資」
ここからは判断が分かれる部分ですが、**「事業との関連性」**を説明できれば経費になります。
⑦ 技術書・セミナー・学習費用(新聞図書費・研修費)
- 技術書: オライリーなどの専門書は高額ですが、全額経費です。
- Udemy・Coursera: 業務に必要なスキルの習得であれば経費です。
- 最新ガジェットの購入: VRゴーグルやドローン、スマートウォッチなどは、「趣味」とみなされやすいです。しかし、「VRアプリの開発案件を受注するための研究用」であれば、それは立派な研究開発費です。ブログやQiitaで技術検証記事を書くなどして、**「事業活動の実態」**を残しておくことが重要です。
⑧ 交際費(会議費)
一人法人(中小企業)は、年間800万円まで交際費を経費にできます。
- エンジニア同士の飲み会: 単なる遊びはNGですが、「情報交換会」「パートナー開拓」であれば交際費です。
- カフェ代: リモートワークで自宅以外のカフェで作業した場合、「会議費」や「雑費」として処理可能です。
4. これはNG!税務調査で否認されるもの
「会社のお金=自分のお金」と錯覚しがちですが、公私混同は厳禁です。
- 家族との外食: 役員会という名目でも、実態が伴わなければ否認されます。
- スーツ・眼鏡: 基本的にNGです。エンジニアは私服勤務が多いため、スーツが業務に「必須」とは認められにくいです。
- 個人的なジム会費: 福利厚生にするには全従業員(一人法人なら自分だけですが)対象でも厳しい場合があります。健康増進は自己責任とされることが多いです。
まとめ:「売上に貢献したか?」が最大の基準
一人法人のIT開発会社が経費を考える際、魔法の言葉があります。それは、**「この出費は、会社の売上を作るために必要でしたか?」**という問いです。
- 最新のiPhoneを買った → 「アプリの動作検証に必要だった」
- 海外のカンファレンスに行った → 「最新技術を輸入して自社サービスに活かした」
このように、**ストーリー(事業関連性)**を説明できるかどうかが鍵です。
経費を使うことは、単に税金を減らすだけでなく、**「将来の自分のスキルや事業への投資」**でもあります。無駄遣いで経費を増やすのではなく、会社の成長につながる「良い経費」を使って、賢く手元にキャッシュを残しましょう。
※具体的な税務判断は、顧問税理士に必ず相談してください。