みなし役員とは?判定基準と「経営に従事」の意味をわかりやすく解説
登記簿に名前がなくても、実態が役員なら税務上は「みなし役員」として扱われます。社長の配偶者や親族に払った賞与が全額否認され、追徴課税につながることも。国税庁の定義に沿って、みなし役員の2つの区分、同族会社の使用人が満たす3つの要件(50%・10%・5%)、そして最大の争点である「経営に従事している」の意味を解説します。
みなし役員とは?判定基準と「経営に従事」の意味をわかりやすく解説
みなし役員とは、登記簿上の役員ではないものの、実態として会社の経営に従事しているため、法人税法上は役員として扱われる人のことです。
「妻は登記上の役員ではないから、従業員としてボーナスを払って経費にしよう」——ひとり法人や同族会社でよくある判断ですが、ここに落とし穴があります。みなし役員と認定されると、支払った賞与が全額経費(損金)として認められず、過去に遡って追徴課税を受けるリスクがあるからです。
この記事では、国税庁が示す定義に沿って、誰がみなし役員に当たるのか、そして最大の争点である「経営に従事している」とは何かを整理します。
1. なぜ「みなし役員」という制度があるのか
役員と従業員とでは、給与に関する税務上の扱いが大きく異なります。
- 従業員の賞与: 全額が会社の経費(損金)になります。
- 役員の賞与: 原則として経費になりません(事前確定届出給与などの例外を除く)。
もしみなし役員という考え方がなければ、社長の配偶者や子を「形だけの従業員」にして高額な賞与を払い、利益を圧縮できてしまいます。これを防ぐため、税法では登記の有無ではなく実態を見て判定します。
役員の給与の取扱いについては、国税庁 No.5211 役員に対する給与 を参照してください。
2. みなし役員の判定基準:2つの区分
国税庁 No.5200 役員の範囲 では、取締役・監査役などの登記された役員に加えて、次の2つのいずれかに当たる人を役員としています。これがいわゆる「みなし役員」です。
区分①:使用人以外の者で、経営に従事している人
職制上、使用人(従業員)としての地位のみを有する者以外の人で、その法人の経営に従事している人です。
具体例として、国税庁は次のような立場を挙げています。
- 取締役・理事となっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長、組合長など
- 合名会社・合資会社・合同会社の業務執行社員
- 人格のない社団等の代表者または管理人
- 法定役員ではないが、定款等で役員として定められている者
さらに、相談役・顧問などであっても、法人内における地位や職務からみて実質的に経営に従事していると認められる場合は含まれるとされています。創業者が社長を退いて相談役になったが、実際には経営判断を下している、というケースが典型です。
区分②:同族会社の使用人で、3つの要件をすべて満たし、経営に従事している人
同族会社の使用人(職制上、使用人としての地位のみを有する者に限る)のうち、次のイ・ロ・ハをすべて満たし、かつ経営に従事している人です。ひとり法人・同族会社で問題になりやすいのはこちらです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| イ | 株主グループを所有割合の大きい順に並べたとき、その使用人が、所有割合50%超の第一順位の株主グループに属している。または、第一〜第二順位、第一〜第三順位を合計して初めて50%超となる場合の、それらの株主グループに属している |
| ロ | その使用人が属する株主グループの所有割合が10%超である |
| ハ | その使用人本人(配偶者、およびこれらの者の所有割合が50%超である他の会社を含む)の所有割合が5%超である |
ここで重要なのは、イ・ロ・ハのすべてを満たし、なおかつ経営に従事していることが条件である点です。裏を返せば、株を1株も持たない配偶者は要件ハを満たさないため、この区分②ではみなし役員になりません。ただしその場合でも、経営に従事していれば区分①に当たる可能性は残ります。
「株主グループ」とは、一の株主等と、その株主等と親族関係など特殊な関係にある個人・法人をあわせたグループを指します。詳細な定義は国税庁 No.5200 役員の範囲 を参照してください。
3. 最大の争点:「経営に従事している」とは?
区分①・②のどちらにも登場する「経営に従事している」。法令に数値基準はなく、実態で判断されるため、ここが税務調査での最大の争点になります。
単なる「部長」「店長」としての現場業務であれば、通常は問題になりません。一方、次のような関与があると、経営に従事していると判断される可能性が高まります。
- 役員会・経営会議に参加し、意思決定に関わっている
- 採用や人事、給与の決定権を持っている
- 金融機関との融資交渉を行っている
- 仕入先や取引条件の最終決定を行っている
つまり、「現場の仕事」ではなく「会社の方針決定」に関わっているかが分かれ目です。
4. 認定されるとどうなる?
税務調査で「この人は従業員ではなくみなし役員だ」と指摘されると、次の影響が生じます。
- 賞与の損金不算入: その人に支払った賞与は役員賞与とみなされ、原則として全額が経費(損金)として認められません。
- 追徴課税: 経費が減ることで所得が増え、過去に遡って法人税を追加で納めることになります。あわせて過少申告加算税や延滞税もかかります。
「従業員だと思って払っていた賞与」が後からすべて課税対象になるため、資金繰りへの影響は小さくありません。
5. 対策:曖昧なポジションを整理する
- 役割を明確にする: 従業員として扱うなら、経営判断には関与させず、現場業務に専念してもらう。
- 給与水準の整合性を保つ: 職務内容に対して、他の従業員とかけ離れた給与・賞与を払わない。
- 実態が役員なら、正式に役員にする: 実際に経営に関わっているなら、役員登記をして定期同額給与として役員報酬を支払うほうが、税務リスクは低くなります。
3の判断をする際は、役員報酬をいくらに設定するかで、個人の手取りと法人に残る利益のバランスが変わります。会社の利益額に応じた最適な報酬額は、役員報酬シミュレーターで試算できます。報酬月額ごとの手取りの目安は役員報酬 月50万円の手取りなどのページで確認できます。
まとめ
- みなし役員とは、登記されていなくても実態として経営に従事しているため、税務上は役員として扱われる人のこと。
- 判定は2つの区分。同族会社の使用人の場合は、イ(50%超の株主グループに属する)・ロ(株主グループが10%超)・ハ(本人と配偶者等で5%超)のすべてを満たし、かつ経営に従事していることが条件。
- 最大の争点は「経営に従事している」かどうかで、実態で判断される。
「登記していないから大丈夫」という理解は通用しません。組織図と親族の職務内容を見直し、判断に迷う場合は顧問税理士に相談してください。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5200 役員の範囲(根拠法令等:法法2、法令7、71、法基通9-2-1)
- 国税庁 タックスアンサー No.5211 役員に対する給与
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の取扱いは会社の実態により異なります。判断に迷う場合は、顧問税理士や所轄の税務署にご確認ください。